前回の内容は、排卵誘発剤の使い方で、
①「排卵障害のため、排卵をさせる目的で使う場合」
について書きました。
排卵誘発剤シリーズもとうとう今回で最後!!
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今回は
②「排卵はあるが、複数卵胞を育てる目的で使う場合」についてみていきましょう!!!
排卵誘発剤、クロミッドなの飲み薬、HMGなどの注射でしたね。
これらの薬を採卵の時に使う方が多くいらっしゃいます。
しかしタイミング法やAIHの際にも使います。
複数の卵胞を育て確率を上げていくという方法です。
副作用として卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎になる可能性がある点に留意しなくてはなりません。多胎妊娠は妊娠中毒症などのリスクがグンと上がります。
しかしながら排卵誘発剤を使いながらのタイミング法やAIHは確立された治療法です。
患者さんの状態に応じて薬の調節することが重要です。
当院では、タイミング法・AIHをされている方は、排卵障害がない方の場合、お薬を使用せずにタイミング・AIHをされている方も多いです。
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そしてもう一つの排卵誘発剤の使い方は、体外受精のときによく使います。
薬の使い方は、大きく分けて二通りです(ここでは全く薬を使わない方法は除外しました)。
一つ目が、クロミッドなどの飲み薬を服用しながら2~3個の卵胞を育て採卵する方法。
二つ目が、注射を使いながら複数卵胞を育て採卵する方法(ロング法・ショート法・アンタゴニスト法など)。
低刺激での採卵のメリットは、身体の負担が少ない、卵巣の機能が低下していても適応となる、OHSSのリスクが低い、連続した周期での採卵が可能など。
しかし、採れる数自体が少ないので、例えば胚盤胞まで一周期で到達する確率や移植できる確率が低くなる等があります。
注射による刺激のメリットは一般的には卵胞を多く育てる事ができます。体外受精などでは多くの卵が採卵できると、移植の回数が増え、妊娠した後にも余剰胚があれば2人目を希望した時に移植することも可能です。
しかし注射による刺激はOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を避ける為にも、卵胞の発育をチェックしながら刺激量を調整する必要があります。
また、卵巣の機能が弱っている場合、注射による刺激を行っても卵巣が反応せず卵胞の数が育たない事もあります。
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そして、卵巣の刺激方法は病院によって方針に差があります。
多少卵巣の機能が弱っていたとしても注射の刺激を第一選択とする病院もありますし、
ホルモン値が良好だとしても飲み薬を選択する病院、薬を全く使用しない病院もあります。
病院によって誘発法を選ぶ基準がそれぞれです。患者様が「この誘発法を試してみたい!」と思っていてもそれが病院の基準と外れていた場合はあまり勧められない事があります。
しかし別の病院に転院したらあっさりと前の病院で認められなかった誘発法を勧められることもよくあります。
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ホルモン値、内診の状態だけではどの刺激方法がより適しているのかは分からない事が多くあります。
実際に排卵誘発をしてみて、前回の状態を踏まえ次は違う方法を試すなど、
ドクターの方針が治療に強く反映します。
ホルモン値には全く問題がないにも関わらずあるお薬だと卵が育ちにくい、別の薬だと育ちやすい。注射で育った卵胞の数と飲み薬で育った卵胞の数にあまり違いがなかったということはよくあります。
もちろんホルモン値(FSHやAMH)や前卵状卵胞の数をみて採卵できそうな数を予想はできますが、あくまでも予想でしかありません。
体外受精の採卵の為に注射を1日おきに打ち、高刺激な誘発をしていた方がいらっしゃいました。ホルモン値が悪いわけでもありませんでしたが、採卵できた卵は3個。仕事の合間を縫って通院を頑張っていましたが、刺激の割合に対して少ない数の採卵になってしまいました。
たくさん注射をしても血流が悪いために、注射の量の割には卵巣まで届いていないということも考えられます。
同じ方でも身体づくりをしていく中で、同じ量と種類の注射をしても、前回より多く取れたり、空胞の数が減るというようなことはよく経験するところです。
もちろん、たくさんの胚盤胞を得ることが不妊治療の目的ではありません。薬を全く使わなくとも身体の負担を減らし、自然に近い状態で良質の卵を1つ育てば良いという考えもあります。
重要なことは、一つの質のいい卵が排卵され妊娠に結びつくことです。
たまたま出てくる卵子がいい卵子である事を待つ訳ではなく、
私たちの治療の目的は、質の良い卵が排卵されやすい身体づくりを行うことです。
脈を診て鍼灸を行い、身体ができてくると、いい卵子が排卵されやすいのか、今まで着床しない方が初めて着床したという報告は多く頂けることが多くありますが、
これはすなわち、良い卵子が排卵されやすくなったからではないかと考えます。