体外受精で予め凍結してある卵を移植する場合、自然周期移植とホルモン補充周期移植どちらかに分かれます。
これらはどう違い、お身体はどのような状態になっているのか。
移植周期はお体の状態をみて移植日を決める事が大事です。
移植する受精卵と着床が同じタイミングに戻します。
子宮はE2(エスとラジオール)やP4(プロゲステロン)等の影響で受精卵を受け入れやすく妊娠しやすい期間があります。
このタイミングが合っている期間をインプランテーションウィンドウ(着床の窓)といいます。
例えば3日目胚を移植する場合は高温期3日目(排卵3日後)に移植します。3日目胚を高温期5日目に移植すると受精卵と子宮の状態があっていないため、着床率が下がってしまいます。
この移植日を決定する際に卵胞チェックにより排卵日を特定して移植するやり方を自然周期移植、月経周期をお薬でコントロールして移植するやり方をホルモン補充周期での移植と言います。
【自然周期移植の流れ】
自然周期ではお薬を使わない事が多いです。病院によっては例えばフェマーラという排卵誘発剤を飲みながら卵胞チェックをする所もあります。
① 排卵前に卵胞チェックをします。(患者様それぞれの月経周期に合わせての受診となります。)
② 採血、内診によって排卵日を特定します。(この卵子を採卵する事もあります。ドミノ周期と言います。)
③ 移植する受精卵に合わせて移植日を決定します。
【ホルモン補充移植の流れ】
ホルモン補充周期移植は薬によってホルモンをコントロールします。
外からホルモンを補充するため卵胞は育たず、排卵も起こらず、基礎体温も変動しません。
① 月経中から卵胞ホルモンを補充し、内膜を厚くしていきます。よく使われるお薬としてはプレマリンやジュリナなどの飲み薬、エストラーナなどのテープ(貼り薬)があります。
② 内膜が厚くなったら黄体ホルモンを追加します。デュファストン、ルトラールなどの黄体ホルモン剤、膣座薬、プロゲステボ注射などのなどがあります。もしくは卵胞ホルモン剤をやめて、卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合薬であるピル(プラノバールなど)を使用する事もあります。
③ 黄体ホルモン剤を追加した日に合わせて移植日を決定します。
自然周期移植とホルモン補充周期での着床率に違いはないといわれます。
しかしながら自然周期移植とホルモン補充周期のどちらに決めるかは、病院によって得意な方法や、独自に出しているデータに基づき移植方法を提案されると思います。
例えば、自然周期移植を第一選択としている病院は自力排卵できない方のみホルモン補充移植を提案し、基本は自然周期移植のみとなります。
逆にホルモン補充移植を第一選択としている病院は患者様からの希望がない場合はホルモン補充移植をメインとします。
自然周期移植とホルモン補充移植のメリット、デメリットは以下の通りです。
自然周期移植
メリット
・薬、貼り薬を使用する煩わしさがない。
・薬等にお金がかからない
デメリット
・移植日が直前に決まる。
・排卵日前は診察が何度か続く。
・自力で排卵できない場合、なかなか移植できない。
ホルモン補充移植
メリット
・移植日が早い段階で分かる。
・移植まで通院回数が少ない。
・自力で排卵しにくい、内膜が整わない方でも移植できる。
デメリット
・薬、注射のお金が別にかかる。
・着床後も薬でコントロールしなくてはならない。
このような点が挙げられます。特に通院の手間、移植日の日程がいつ頃決まるかなどはお仕事をしながら治療している方には大事な点だと思います。
移植のやり方は大まかに分けるとこの自然周期移植とホルモン補充周期の移植になりますが、これらの移植にもう少し手を加えた方法もあります。
【シート法(SEET法)】
シート法では胚盤胞まで培養した際に使用した培養液を別にとっておき凍結します。
別の移植周期に胚盤胞を移植する2,3日前に凍結しておいた培養液を融解して子宮に注入します。その後に胚盤胞を移植します。
【二段階移植】
二段階移植ではまず排卵から2日後に初期胚を移植します。
そしてその3日後に胚盤胞を移植します。
つまり同じ周期に2つの受精卵をタイミングをずらして移植します。
自然妊娠では卵管内で受精した卵は数日かけて内膜に着床します。この間に受精卵から子宮内膜へ着床しやすくするサインを送っているとされています。
シート法、二段階移植ではこのサインを移植前に送り、着床しやすい状態に近づけます。そのサインを送る方法が培養液の注入、初期胚の移植となります。
シート法、二段階移植で画期的に妊娠率が上がったという訳ではありません。しかしいいとされる卵を移植してもなかなか着床しない、そういう方に新たに試すことができる方法といえるでしょう。
今まで移植のやり方で妊娠率は変わらないと述べてきました。
しかし、患者様それぞれに合った方法はあると言えます。
内膜の状態がよくないまま自然周期で移植してもなかなか着床しません。
そういった場合ホルモン補充移植が適しているといえるでしょう。
また内膜、排卵に問題ない方が毎回ホルモン補充周期で移植してもうまくいかなかった場合は自然周期移植を試す価値は十分あると思います。
着床のための鍼灸治療は10mmを目標としております。
そのため着床日当日の治療が一番重要なのではなく、着床の治療は遅くとも移植する周期の生理が始まった直後からスタートしていただきたいと思います。
その方が内膜が厚くなっていく最中治療ができますので10mm行く可能性が高いのです。
身体づくりの根本は②ヤジロベエ理論 です。
そうすることで、不妊鍼灸治療STEP1、2にアプローチします(①良質の卵を得る[自然妊娠、IVF問わず一番重要] 、②移植の為に子宮環境や内膜を整える[着床の鍼灸])
体外受精において受精卵の状態の方がクローズアップされがちです。
確かに受精卵が一番大事結果を左右する要素が強いと思います。
しかし、受精卵の質はいいので、着床障害が原因じゃないかと言われる方もたくさんいらっしゃいます。本当に多いなと思います。
着床障害の対策として、統一された見解や治療法も現状ありません。
だからこそそのようなお困りの患者さまが来院されているのでしょう。
例えば、4AA以上のグレードを7回以上移植しても一回も着床したことがなく、8回目の移植時に当院へ来院された方がおりました。
8回目は残念でしたが、9回目で妊娠されました。ご年齢も若く今までの8回の移植の受精卵全てが問題があるとは思えませんでした。子宮環境を整えることはやはり重要なのです。
そあら鍼灸院では移植当日までにふっくら温かく、気の充実した柔らかいお腹に整えておくことを重視しています(不妊鍼灸治療STEP2②移植の為に子宮環境や内膜を整える[着床の鍼灸]参照)。
着床日だけの治療だけでなく、確率を更に上げておくために、早めの準備をお勧めしております。